家族が認知症を発症して判断能力を喪失してしまうと、
預貯金が凍結されて生活に支障が生じてしまうぽそれがあります。
その対策は色々あるのですが、よく使う手段は以下の3つになります。
家族信託とは、財産の所有者(委託者)が信頼する家族を受託者として信託契約を締結し、
受託者となった家族が代わりにその財産の管理や処分を行う仕組みです。
家族信託の登記をすると、不動産の名義は受託者に移り、
受託者は委託者のために誠実に財産を管理する義務を負い、報酬をもらう権利を得ます。
遺言とは、自分の財産について死後誰に何を引き継ぐのか最終の意思表示をすることです。
認知症が軽度で意思能力が残っている段階であれば、遺言書を作成することができます。
遺産の分け方をあらかじめ決めておくことで、相続トラブルの予防につながります。
相続発生後に遺言能力(意思能力)の有無が問題になるリスクを減らすため、
自筆証書遺言よりは公証役場の公証人が作成する公正証書遺言のほうが一般的には望ましいです。
家族で住む家や、親の預貯金を生前に元気な親族に移転しておけば、
親が認知症を発症してもその活用に支障はありません。
ただし、贈与税の額が大きくならないよう注意が必要です。
また、認知症を発症すると相続税対策ができなくなるため、
その前に贈与税のかからない範囲で生前贈与を進めるなどの相続税対策が有効な場合もあります。
認知症対策は、この3点セットで連携をとって進めて行くべきですが、
家族信託は登記が必要であるため司法書士が、生前贈与は相続税対策であるため税理士が
担当するなど分業して、十分に連携しないケースがしばしば見られます。
Lさんは父親に挙動不審を感じるようになり、
認知症の疑いがあると考えて当センター長に相談しました。
当センター長はLさんの父親と面談してまだ判断能力はあると判定したうえで、
当面のLさんら家族の生活保護と、将来の相続税節税のために、家族信託・生前贈与・遺言書作成の
十分に連携された方策を提案し、Lさんの父親の納得のいく解決を実現しました。