

おひとり様の相続が増加
近年、配偶者も子どももいない、いわゆる「おひとり様」の方が亡くなった後の相続案件が増えています。少子高齢化と未婚率の上昇を背景に、兄弟姉妹や甥・姪などが相続人となるケースが多くなってきました。しかしこうした相続では、生前の生活状況が見えにくく、財産や借金の全容も把握しづらいため、「よくわからないしリスクもありそうだから」と、相続放棄を選ぶ相続人が多いのが実情です。
たしかに、相続放棄をしてしまえば債務の心配はなくなりますので、安全策ともいえます。しかし、いったん相続放棄をしてしまうと、その後に「実は価値のある財産があった」とわかっても取り戻すことはできません。また、相続放棄には家庭裁判所への申述という法的手続が必要であり、一定の期間制限もあります。安易な判断は後悔を招く可能性があります。
そこで本稿では、見た目や思い込みで相続放棄をしてしまう前に、落ち着いてできる限りの確認を行い、総合的に判断することの重要性をお伝えします。
おひとり様はゴミ屋敷に住んでいるケースが多い
おひとり様の相続において、被相続人が住んでいた家が「ゴミ屋敷状態」になっていることが少なくありません。これは決して人格を非難するものではなく、老いや病によって日常生活が困難になった結果、片付けや掃除が行き届かなくなった状況です。加齢による身体機能の低下や認知機能の衰え、孤立などが背景にあり、本人にとっては必死に生き抜いた結果としての姿でもあります。
ところが、こうした住環境を目の当たりにした相続人は、「こんな生活をしていた人に財産管理能力があるわけがない」「借金だらけに違いない」といった先入観を抱きがちです。そのため、遺品整理や不動産の確認をする前に、「放棄してしまったほうが安心」と考えてしまうのです。
しかし、住まいが荒れているからといって必ずしも負債があるとは限りません。むしろ、年金や退職金を地道に貯めていた方や、価値ある不動産を所有していた方も少なくありません。「見た目が悪い=価値がない」と即断するのではなく、一歩立ち止まって実態を調べてみることが大切です。
ゴミ屋敷の価値
家の中が散らかっていても、また大量のゴミが積まれていても、それだけで不動産の価値がゼロになるわけではありません。不動産の評価は、基本的には「立地」と「建物の状態」によって決まります。たとえ室内がゴミであふれていたとしても、建物そのものがまだしっかりしていて、立地が良ければ十分な売却価値がある可能性があります。
例えば、都市部の駅から徒歩圏内の戸建住宅や、地方都市でも近隣にスーパーや学校があるような地域では、中古住宅としてのニーズもあります。築20~30年程度であれば、リフォームを前提とした「再生物件」としての価値が見込める場合もあります。
もちろん、室内の清掃や遺品整理に費用はかかります。しかし、専門業者に見積もりをとれば、おおよその費用感を把握できます。仮に物件の売却価格が1,000万円で、清掃・解体などに200万円かかるとすれば、残りの800万円は相続財産としてプラスです。感情的に「こんな家いらない」と思ってしまう前に、冷静に「資産としてどれくらいの価値があるか」を検討することが重要です。
負債調査
相続の可否を判断する上で、重要なのが「負債の有無」です。たとえ不動産がある程度プラス評価であっても、大きな借金があれば相続することはリスクとなります。そのため、負債の実態をできる限り把握する必要があります。
まず行うべきは、家の中の残置物の確認です。金融機関からの通知書、クレジットカードの明細、ローン契約書などが残されていることがあります。これらを確認するだけでも、ある程度の借入状況が把握できることがあります。
次に、信用情報の開示請求も有効です。CIC、JICC、全国銀行個人信用情報センターといった信用情報機関に対し、被相続人の死亡届や戸籍をもとに開示請求することで、ローンやクレジット履歴を確認することが可能です。手間はかかりますが、思わぬ負債を抱えてしまうリスクを回避するための重要な手段です。
また、公共料金や税金の滞納がある場合も、自治体からの通知が家に届いていることがあります。相続放棄の前に、こうした書類をひとつひとつ確認し、負債の全体像を把握する努力を怠らないようにしましょう。
総額でプラスになるなら多少面倒でも相続した方がお得
相続において重要なのは、「面倒だから」ではなく、「総合的に見て得か損か」で判断することです。不動産の価値がプラスであり、負債もそれほど多くないと見込まれるのであれば、たとえ手続きが煩雑でも相続した方が有利です。
実際、相続放棄には注意点もあります。例えば、遺品を処分してしまったり、不動産を一時的に使用したりすると、「相続放棄をしたのに財産を処分した」と見なされて放棄が無効になる可能性があります。こうしたリスクを避けるためには、相続放棄をする前に慎重な行動が求められます。
「面倒くさい」「掃除が大変そう」「ゴミの山を見たくない」といった感情が先行しがちですが、そこを一歩踏みとどまり、専門家や遺品整理業者、不動産業者に見積もりを依頼し、費用と売却見込み額を比較してから判断する方が、結果的に得をすることも多いのです。
自分で判断がつかないと感じたときは、司法書士や弁護士などに相談しながら進めるのが安全です。多少手間がかかっても、金銭的にプラスになる道を選んだ方が将来の後悔も減るでしょう。
まとめ
ゴミ屋敷のように見える家だからといって、即座に相続放棄を選ぶのは早計です。おひとり様の相続は、外から見えにくい情報が多いため、先入観で判断しがちですが、実際にはプラスの財産が眠っているケースも少なくありません。
不動産の価値や負債の有無について、できる限り情報を集めた上で、総合的に判断することが重要です。「手間をかけずに放棄したい」と考える方ほど、一歩立ち止まって「実は得をするチャンスを逃していないか」を検討する価値があります。
相続は感情ではなく、事実と数字で判断するべき問題です。目の前のゴミの山に目をそむけるのではなく、その奥にある「本当の財産」を見極める目を持ちたいものです。どうしても判断が難しい場合は、専門家に相談することを強くおすすめします。
当センターではこうした最初は相続放棄の予定であったが調査した結果相続した方が有利だとわかり相続手続を進めたケースを多数対応してきました。相続放棄か承認かで迷われましたら当センターにお気軽にご相談ください。