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相続コラム

2025年11月02日

意外に難しい?遺言執行者の選び方

梅田遺産相続解決センター

遺言執行者を安易に選ぶと後が大変に
遺言を書き残す際、複雑な財産構成や相続人間の調整が必要なケースでは、遺言執行者を選任することが一般的になっています。遺言執行者は、遺言内容に従って相続手続を進めるための極めて重要な役割を担います。特に、複数の不動産や預貯金、さらに株式など管理の手間がかかる財産が含まれている場合、遺言執行者がいないと、相続手続は混乱しやすくなります。こうした背景から、同居の親族や、長年信頼を寄せてきた弁護士を遺言執行者に指名する例も広く見られます。
しかし、遺言執行者には遺言を誠実かつ厳格に執行する義務が課されているため、遺言内容の柔軟な変更や相続人の事情に合わせた調整が許されないことがあります。つまり、遺言執行者は被相続人の思いを体現する存在である一方、その役割が厳格であるがゆえに、状況に応じた対応が望めない場合があります。たとえば生前には親族間の関係が良好であっても、相続の場面では感情的摩擦が生じ、遺言内容を巡る調整が必要となる場合があります。その際、遺言執行者が柔軟な判断をできず、かえって対立が深まることも想定されます。
また、遺言執行者を務める人物は、相続人全員に対して中立である必要があり、一部の相続人の意向を優先することは許されません。これは親族や弁護士のいずれが就任した場合でも同様です。信頼できる人物だからと安易に遺言執行者を選ぶと、後に想定外の制約が生じ、被相続人の希望が完全には実現されない可能性がある点にも注意が必要です。
このように、遺言執行者選任は慎重さが求められます。形式的に遺言を作成するだけでなく、遺言執行者が負う責任と制限を理解し、適切な人選を行わなければ、遺言の実現に支障を来す恐れがあります。遺言執行者選びを軽視せず、十分な検討を行うことが、スムーズな相続手続の第一歩といえます。そこで本稿では遺言執行者選任の難しさとその対策法を紹介します。

遺言執行者は特定の相続人の代理人となれない
遺言執行者に就任する人物として、被相続人が生前から親しくしている弁護士を選ぶことは多く見られます。弁護士は法律の専門家であり、遺言の内容を理解し、相続手続を適切に進めてくれるという期待があります。そのため、信頼を寄せる弁護士を遺言執行者に選べば、安心して相続の備えができると考える方も少なくありません。
しかし、遺言執行者には中立性が求められ、特定の相続人の利益を優先することは許されません。具体的には、遺言執行者は特定の相続人の代理人となり、その依頼を受けて手続を行うことは利益相反となり許されないとされています。たとえ被相続人が「この相続人だけは特に守りたい」と考えていたとしても、遺言執行者に指名された弁護士がその相続人の代理人として動くことはできません。
例えば、被相続人が長男に全ての遺産を相続させる内容の遺言を残したケースを考えます。相続開始後、他の相続人が遺留分侵害額請求を行ってきた場合、本来その対応には専門的な助言と法律行為が求められます。しかし、もし信頼する弁護士を遺言執行者に指名していた場合、その弁護士は長男の代理人として遺留分請求への対応をすることができません。これは遺言執行者として中立的な立場にある必要があるためです。
このように、信頼できる弁護士を遺言執行者に選んだことで、かえって最も守りたい相続人を十分に支援できない事態が起こり得ます。被相続人が善意で選んだ人選が、結果として理想の相続実現を阻むことにつながることは十分にあり得るのです。この点を踏まえると、信頼できる弁護士がいる場合でも、その役割をどのように設定するか慎重に検討すべきだといえます。

被相続人の工夫
被相続人が遺言を作成する際、特定の相続人を優遇したいと考える場合もあります。そのようなとき、最も信頼できる弁護士を遺言執行者として選びたくなりますが、前述のように、遺言執行者として選んでしまうと、その弁護士がその相続人の代理人として活動することができなくなるリスクがあります。そこで、被相続人は信頼できる弁護士をあえて遺言執行者とせず、優遇したい相続人の代理人として残しておくという工夫が必要になります。
遺言の執行には、不動産の所有権移転登記や預貯金の払戻しなど、専門知識が求められる業務が含まれます。これらは司法書士が得意とする分野であり、遺言執行者として司法書士を選任することも非常に有力な選択肢です。司法書士を遺言執行者に指名し、信頼できる弁護士には相続人の代理人としての役割を期待するという形は、柔軟で実務的な対応と言えます。
また、遺留分侵害が懸念される場合、遺言書に付記事項を加えて、遺留分請求を行わないよう求める意向を示しておくことも一つの方法です。法的拘束力はありませんが、被相続人の意思を明確に示すことで、相続人の心理的な抑制効果が期待できます。さらに、遺留分対策として、重要性の低い財産をその他の相続人に相続させる内容にするなど、バランスをとる工夫も可能です。
被相続人が生前にどこまで準備するかで相続の円滑さは大きく変わります。単に遺言を書くことにとどまらず、実際の手続や関係者の立場を踏まえた役割分担を考えることで、希望する相続を実現する可能性が高まります。慎重な検討と適切な専門家の活用が求められる場面です。

相続人の工夫
相続が開始した後、遺言執行者に選任された相続人は、煩雑な手続きを自ら行わず、専門家に任せたいと考えることがあります。弁護士に依頼すれば安心だと考えがちですが、遺言執行者が弁護士に業務を依頼すると、その弁護士に対して、自身の代理人を依頼することができなくなります。これは、弁護士が遺言執行者の代理として動く立場になるため、個別相続人の利益を優先することができないためです。
そのため、遺言執行者となった相続人が外部の専門家に業務を委託する場合、司法書士などに依頼する方法が適しています。司法書士であれば不動産登記や金融機関手続に精通しており、遺言執行業務を円滑に進めることができます。そして、信頼できる弁護士は、相続トラブルや遺留分請求への対応のための「味方」として確保しておくべきです。
遺留分請求は、相続人間のトラブルの代表例です。特に、一部の相続人に財産が集中する場合、他の相続人から請求がなされることは珍しくありません。その際、信頼できる弁護士に相談できる環境があれば、スムーズに対応できる可能性が高まります。逆に、遺言執行業務を弁護士に任せてしまい、依頼できる弁護士がいなくなると、精神的にも実務的にも不利な状況に陥りかねません。
これらを踏まえると、遺言執行者に指名された相続人は、まず自分の立場と必要な支援体制を冷静に見極める必要があります。そして、遺言執行業務と相続人としての利益確保を両立させるため、どの専門家に何を依頼するか戦略的に考えることが重要です。相続手続は「誰に依頼するか」によって結果が大きく変わるため、適切な判断が求められます。

誰に何を頼むか
遺言執行者を安易に選ぶと、相続開始後に手詰まりとなるケースが少なくありません。相続は単純な手続きではなく、法的手続、金融機関対応、不動産登記、相続人間の交渉など、多岐にわたる対応が必要です。これらの全てを「信頼できる弁護士に任せれば良い」と考えるのは、実務的な観点からは十分ではありません。
相続手続では、業務内容ごとに適任者が異なります。不動産関連は司法書士、税務申告が必要な場合は税理士、必要に応じて弁護士が紛争対応を行うことになります。このように、手続の種類に応じて適切な専門家を選ぶことが、効率的かつ円滑な相続につながります。信頼できる弁護士がいる場合でも、その弁護士は遺言執行者としてではなく、相続人の「守り手」として機能させる方が賢明な場面は多いです。
また、遺言執行者を誰にするかという決定だけでなく、遺言内容自体も手続を見据えた設計が求められます。遺言執行者が動きやすいよう整理された内容であれば、相続人間の対立防止にもつながります。重要なのは、「遺言を作成する」だけではなく、「遺言を実現するための体制」を整えることです。誰に何を頼むのか、どこまで任せるのかを事前に整理し、関係者間で理解を共有しておくことが必要です。
遺言は被相続人の思いを伝える大切な手段ですが、その実現には現実的な手配と準備が不可欠です。感情だけでなく、実務的な視点を取り入れながら、最適な役割分担を考えることが望まれます。

まとめ
遺言執行者の選任は、遺言の実現における重要な要素です。一見、信頼できる人物を選べば問題ないように思えますが、遺言執行者には中立性が求められるため、特定の相続人を支援したい場合にはかえって障害になることがあります。被相続人は、遺言執行者の役割と制限を理解し、信頼できる弁護士を別途確保するなど、役割を切り分けて準備することが重要です
相続人もまた、遺言執行者としての立場を理解し、必要に応じて司法書士や税理士に業務を依頼しながら、弁護士を紛争対応のための味方として温存するという戦略が求められます。相続は感情面と実務面が複雑に絡むため、早い段階から専門家の助言を得て、適切な準備を行うことが大切です
遺言執行者の選任と専門家の活用は、相続の成否を左右する判断です。冷静かつ慎重に対応し、大切な想いが正しく実現されるよう備えていきましょう。
当センターでは遺言執行における様々なトラブル対応の実績があります。下記よりお気軽にご相談ください。

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